がん検診の利益・不利益等の適切な情報提供の方法の確立に資する研究班
がん検診の利益・不利益等の適切な情報提供の方法の確立に資する研究班

研究班について

我が国のがんの現状と本研究班の目的

がん死亡は我が国の死因のなかでは他を圧して第一位を占めていて、他の主要な死因である脳血管疾患と心疾患による死亡数の合計を上回ります。そのため、がん対策は我が国にとって喫緊の課題です。国レベルでがん死亡率を低下させる取り組みとして、国際的には喫煙対策と一部のがん検診にのみ科学的根拠があると位置付けられています。実際、これまでヨーロッパを中心とした多くの国が検診によって子宮頸がん、乳がんの死亡率低下を実現させてきました。しかし、残念ながら日本ではそのようながん検診の成果は挙がっていないのが実情です。

同じように実施していても、なぜ日本ではがん検診によってがん死亡率が低下しないのでしょうか。その原因の一つとして、日本では死亡率を低下させるために備えていなければならない要件が満たされないままでがん検診が行われていることがあります。その中でも、科学的根拠に基づいたがん検診を選択することは死亡率を低下させるために第一に満たすべき要件です。そのため、国は科学的根拠を綿密に検討し、がん対策として行政が実施すべきがん検診を指針で示しています。しかし、科学的根拠が明確ではなく、国の指針にも示されていないがん検診を実施している市区町村は80%以上と大多数です(がん検診実施状況調査)。このように、我が国で第一の要件が満たされないことの主な原因は、実際にがん検診に従事したり、がん検診の運用に助言したりする医療者や公衆衛生の専門家において、がん検診とその科学的根拠に関する知識が不十分なことです。そのため、国の指針に示されていないがん検診は死亡率の低下が期待できないだけでなく、検査による合併症が多いなどの不利益が大きいことがはっきり認識されていません。また、我が国のがん検診受診率は諸外国と比較して低いのですが、「健康に自信があり必要性を感じないから」などが未受診の主な理由であることが分かっています(令和元年世論調査)。これはがん検診に対する誤解です。ただ、多くの一般市民は医療者や公衆衛生の専門家からがん検診に関する情報提供を受けるため、現状では誤解も仕方がないかもしれません。そのため、医療者や公衆衛生の専門家だけではなく、一般市民にも自らが理解して判断してもらえるような知識をつけてもらうことも重要な課題だと考えています。

本研究班の目的は、がん検診に携わる医療者や公衆衛生の専門家ががん検診に関する正しい知識を持つことを促進し、我が国のこのような現状を打開することです。科学的根拠に基づいたがん検診が実施され、がん検診の対象者であり受益者である一般市民が、医療者などから正しい情報提供を受け取ることにより、がん検診の利益と不利益について十分に理解した上での受診の意思決定(検診の基準、WHO Andermann 2008)が可能になると期待します。

医療者らががん検診に関する正しい知識を持つことを促進するためには、良質の成書が必要ですが、これまで、我が国には入手可能ながん検診に関する医療者向けの成書がほとんどありませんでした。本研究班では、国際標準とされており、我が国にがん検診の正しい知識を紹介する教科書にふさわしい資材として、WHO(世界保健機関)欧州事務局による資材を選定し、WHOから翻訳権を得て、その日本語版を作成、出版しました。また、その内容を基にしたe-ラーニング等の教育資材を開発、公開します。さらに、一般市民向けの資材も開発し、医療者らががん検診の対象者に向けた情報提供を支援します。

以上により、医療者、公衆衛生の専門家などが正しい知識に基づいて科学的根拠のあるがん検診を実施し、がん検診の対象者である一般市民が死亡率の低下が見込めるがん検診を受診することが可能になります。

助成金について

本サイトは、厚生労働科学研究費補助金(がん対策推進総合研究事業)
「がん検診の利益・不利益等の適切な情報提供の方法の確立に資する研究」
(研究代表者:斎藤 博)により支援されています。

事務局のご案内

国立大学法人弘前大学 医学部附属病院 医療情報部
(〒036-8563 青森県弘前市本町53)
担当:田中里奈、雑賀公美子、松坂方士